【ソロバンより】個人仕事の文字数知りたくて書いてるだけです。気にしないでください。

 HF Internationalには都会が似合う。ぎょうにんべんの“街”の音楽を作り続けてきたユニット、それが彼らである。

 

 HF International(アッシュエフ・インターナショナル)は、DJ / ビートメイカーの平岩克規と、ドラムンベースやハウスを制作してきたマルチプレイヤー福田征希によるメロウ・ブレイクビーツ・ユニット。ユニット名の“HF”は“HIRAIWA”と“FUKUDA”それぞれの頭文字でもある。ディスクユニオンの傍系レーベルTHINK! より2010年にデビュー 。

 代表曲となった大貫妙子『都会』のラヴァーズ・ロック・カヴァーほか、Dennis Brownの『Love Has Found Its Way』、Hall & Oates『I Can’t Go For That(No Can Do)』のレゲエディスコカヴァーを自身のレーベルからリリース。HMVより『If You Want It feat. TeN』のリリース他、直近では加納エミリ『フライデーナイト -HF International MIX-』、So Nice『光速道路』のリワーク、檸檬FEAT. かせきさいだぁ 『僕はピカソ』、Bagus!『Cheek Time』のリミックスなども手がけている。
So Nice『光速道路』のリワークはかのMUROInstagramに投稿したところ、グラミー賞に3度ノミネートされたKENNY DOPEも「I need this」とコメントを寄せている。
2020年2月にリリースのPaul Murphy主宰のレーベルClaremont56のコンピレーション・アルバム『Claremont Editions』に楽曲が収録され、UKデビュー。
9月9日にはオリジナル曲として林以樂(SkipSkip BenBen)、The LASTTRAKと共同制作
でバレアリック・ディスコチューン「After Party」をリリース。

 独自の音楽性から国内外のミュージシャンやDJから着実に支持を集めている。

 

 ……と、メールで送られてきたプロフ文をまんまコピペすると何やらもの凄いことになるのだけれど、要は都会に、街に似合う音楽を作り続けてきた人たちである。

 何せ最初のヒットとなった大貫妙子の昔のシティポップのカバーからしてタイトル『都会』なのだから、狙った訳ではないのだろうけどその後の運命も推して知るべしといったところだろう。

 

 ぼくは彼らがくだんの『都会』の後に制作したDennis Brownの『Love Has Found It's Way』のリメイクが大好きで、初めて聴いた時から夢中になった。デニス・ブラウンは“CROWN PRINCE OF REGGAE(レゲエの皇太子)”と称された偉大なるアーティストで、ジャマイカではかのBOB MARLEYと並ぶレジェンド中のレジェンド。そんな彼の代表曲である『Love Has Found It's Way』を、トークボックス奏者sequickがトロトロに甘くカバーした同曲はそれはそれは美しく……新たな時代の息吹を感じるのに十分な衝撃を与えられた。HFの二人は根っからのレゲエ畑のアーティスト、という訳ではないけど、それだけに“レゲエ”の美味しいところが客観的に見えていて、作品の完成度が高いのはそんなところに理由があると思う。

 そしてそれは、彼らが愛する“LOVERS ROCK”にも通じる。

 安価な労働力として60〜70年代にイギリスに大量移民してきたジャマイカ人だが、そんな彼らの息子や娘たち、生まれた時から大英帝国の空気を吸っている世代は、親の世代が聴いていた伝統的なカリビアン・ミュージックではなく、もっと自分たちの肌感覚に寄り添ってくれる音楽を、「等身大のポップス」を求めていた。

 もともとの「レゲエ」が持つメロウネス、ダンスミュージックとしての機能性はそのままに、ロンドンの灰色の空を彩るためにアップデートされた都市の音楽ー、それが“LOVERS ROCK”だ。

 

 ぼくは福井県生まれの地方出身者だが、それだけに都会には憧れがあった。若い頃は東京や大阪、そして彼らが拠点とする名古屋に猛烈に行きたかった。自らを乗せた電車が、または車が街に近づくにつれ、立ち並ぶ高層ビルや色とりどりのネオンが目に飛び込んで来ることに胸が騒いだものだ。それは、実際にそーいう場所に住んでしまうと単なる風景になってしまって何も感じなくなるのだけれど、やはりあの時抱いた感情は、今となっては得難いものだった。

 

 後から読み返すと笑い話になってると思うのだけれど(そうあってほしいのだが)、この作品がリリースされた2021年の世界情勢は未曾有のコロナ禍の中にある。感染拡大を食い止めるため密閉・密集・密接の“3密”を避けることが声高に叫ばれ、他者とのソーシャルディスタンスを保つ為コンビニやスーパーのレジカウンターにはプラスチックの透明な仕切り板が置かれている。『STAY HOME』が提唱され街からは人が消え、クラブやライブハウス関係者は深刻な大打撃を被った。

 ぼくは今大阪に住んでいるが20年4月の緊急事態宣言発令後、ゴールデンウィークに初めて難波に行ったら、連休中だというのに人がまばらにしか歩いておらず生まれて初めて見る光景にショックを受けた……。

 

 そんな中、彼らがこのような“街に行きたくなる”作品を作ってくれたことが単純に嬉しかった。HF Internationalは昨年10周年。コロナの影響でリリースは一年持ち越してしまったけれど、節目の年を飾るに相応しい素晴らしい作品だ。

 10周年、本当におめでとうございます。

 永遠に続けることは不可能だけど、願わくばこれからも末長く活動は継続してほしい。HFの音楽を聴くと、今よりもずっとずっと都会に行きたかった“あの時”の気持ちを思い出させてくれるからー。

 自分の故郷では見たこともなかった、天高くそびえるビル群、光り輝く極彩色のネオン街、信号が変われば洪水のように人が押し寄せてきて、まるでお祭りをやっているみたいだ。そこではとてつもなく“何かが起こりそう”で、夢を見ているみたいだった。

 

 ぼくがHF Internationalの音楽を好きなのは、そんなキラッキラした“夢”をずっと見せてくれるからなんだと思う。まるで、魔法にかけられたみたいに。